診療のご案内(予防医療・寄生虫予防)ノミ

ノミは「最も身近な外部寄生虫」です

ノミには多くの種類が存在しますが、犬や猫に寄生するほとんどはネコノミ(Ctenocephalides felis)です。名前に「ネコ」とつきますが、犬にも猫にも寄生し、人を吸血することもあります。

野良猫や野生動物が行動する環境には広い範囲でノミが存在しており、草むらや住宅周辺、公園などで動物の体に付着し、そのまま家庭内へ持ち込まれることがあります。

生活環:見えているノミは“ごく一部”です

ノミは非常に小さく動きも速いため見つけにくい寄生虫ですが、成虫は生活環全体のわずか約5%程度にすぎません。1匹のノミを見つけた場合、周囲の環境中にはすでに多数の卵・幼虫・さなぎが存在している可能性があります(図:ノミの生活環)。

そのため、「見つけてから駆除する」のではなく、そもそも寄生させない予防が最も重要になります。

ノミは小さく動きが速いため、虫体そのものを見つけることは、大量に寄生していない限り難しい場合が多くあります。一方で、被毛に残るノミの糞(黒い粒)は比較的見つけやすく、寄生を確認する重要な手がかりになります。

ノミの寄生を確認する方法として、これらの糞を濡らしたティッシュに触れさせる方法があります。糞に含まれる血液が溶け出し、赤くにじんだ場合は、ノミが寄生している可能性が高いと判断できます。

図:ネコノミの生活環

図:ネコノミの生活環

動物への直接的な影響

ノミアレルギー性皮膚炎

一部の犬や猫では、ノミの唾液成分に対して強いアレルギー反応を示し、「ノミアレルギー性皮膚炎(FAD)」を発症します。犬では激しい痒み、脱毛、過剰な舐め行動などがみられ、猫では粟粒性皮膚炎(小さな発疹が多数みられる皮膚炎)が特徴です 。

貧血

多数寄生した場合、吸血により重度の貧血を生じることがあります。繁殖中の雌ネコノミは、1匹あたり1日約13.6 µLの血液を吸血すると報告されており(Dryden, 1991※1)、理論上は約74匹で1日1 mLの血液が失われる計算になります。特に体の小さな幼若動物(子犬や子猫)では注意が必要です。

※1 Dryden MW et al. Blood consumption by the cat flea, Ctenocephalides felis (Siphonaptera: Pulicidae). J Med Entomol. 28: 394-400 (1991) PMID: 1875365

感染症の媒介

ノミは様々な感染症を媒介し、猫だけでなく人に感染する人獣共通感染症も含まれます。予防対策は、動物だけでなく、ご家族の健康管理にも関係します。

瓜実条虫(犬・猫)

瓜実条虫は犬や猫の小腸に寄生する条虫です。ノミはこの寄生虫の中間宿主であり、条虫の卵を摂取したノミの体内で幼虫が発育します。そのノミを犬や猫が毛づくろいの際などに飲み込むことで感染が成立します。

感染した動物では、肛門周囲に米粒のような白い片節が付着していることできづかれることがあります。これは虫体の一部で、内部には多数の虫卵が含まれています。

また、まれではありますが、人が誤ってノミを経口的に摂取することで感染することがあり、国内でも人体感染例が報告されています。その多くは小児例です(津村, 2017※2)。

※2 津村 直幹 ら. 瓜実条虫症の1幼児例. 感染症学雑誌. 81 : 456-458 (2007)

バルトネラ・ヘンセレ:猫ひっかき病の原因菌(人獣共通感染症)

細菌のグループであるバルトネラ属のうち、いくつかの種はネコノミによって媒介され、猫が保有宿主(症状を示さずに細菌を保有する動物)となることが知られています(Moore, 2024※3)。

このうち Bartonella henselae(バルトネラ・ヘンセラエ)は猫ひっかき病の原因菌です。日本国内の調査では、猫の約5〜10%前後で Bartonella henselae が検出されていますが、若齢猫やノミ寄生の多い環境では20%以上に達することも報告されています(Maruyama, 2003※4;Sato, 2017※5)。

感染した猫にひっかかれたり、咬まれたりすることで人に感染します。感染すると、接触した部分の皮膚が赤く盛り上がることがあり、その後、発熱、頭痛、食欲不振、リンパ節の腫れなどの症状が現れることがあります。特に免疫機能が低下している人では重症化することがあるため注意が必要です。

※3 Moore CO et al. Vector biology of the cat flea Ctenocephalides felis. Trends Parasitol. 40: 324-337 (2024) PMID: 38458883

※4 Maruyama S et al. Seroprevalence of Bartonella henselae, Toxoplasma gondii, FIV and FeLV infections in domestic cats in Japan. Microbiol Immunol. 47: 147-53 (2003) PMID: 12680718

※5 Sato S et al. Molecular survey of Bartonella henselae and Bartonella clarridgeiae in pet cats across Japan by species-specific nested-PCR. Epidemiol Infect. 145: 2694-2700 (2017) PMID: 28780918

ノミ媒介性リケッチア(Rickettsia felis※人で発熱などを起こすことがありますが、発症はまれとされています

近年、ネコノミから Rickettsia felis という細菌が検出されることが日本でも報告されています(壁谷, 2013※6)。人で発熱などを起こすことがありますが、発症はまれと考えられており、現時点では臨床的な問題となることは多くありません。

※6 壁谷 英則 ら. わが国のノミ媒介性新興リケッチア感染症の分布状況. 第156回日本獣医学会学術集会 (2013)

当院の取り扱い商品

飼い主様のライフスタイルや生活環境と、それぞれの薬剤の特徴を踏まえ、最適な商品をご提案いたします。
ご不明な点がありましたら、スタッフまでお気軽にご相談ください。

犬のノミ・マダニ予防薬

図:犬のノミ・マダニ予防薬

猫のノミ・マダニ予防薬

図:猫のノミ・マダニ予防薬