診療のご案内(予防医療・寄生虫予防)フィラリア(犬糸状虫)

「必要な期間に、必要な方法で、無駄のない予防」をご提案します

フィラリア(犬糸状虫 Dirofilaria immitis)は、蚊の吸血により体内へ侵入し感染が成立します。放置すると幼虫は体内で発育し、数か月後に心臓〜肺動脈に寄生します。寄生数が増えると、咳・運動不耐性・呼吸困難などが進行し、重症例では右心不全や命に関わる状態に至ることがあります(図:フィラリア症(犬糸状虫)とは)。

当院では、生活環境(屋外活動の頻度、周辺の蚊の多さなど)と個々の特徴(基礎疾患、犬種、年齢、薬剤感受性、嗜好性)を踏まえて、「必要な期間に、必要な方法で、無駄のない予防」をご提案します。

図:フィラリア症(犬糸状虫)とは

図:フィラリア症(犬糸状虫)とは

フィラリアの感染状況

犬におけるフィラリアの感染状況は、予防薬の普及により大きく減少しています。フィラリアは、感染した犬の血液にいるミクロフィラリア(フィラリアの幼虫)を蚊が吸血することで媒介され、他の犬へ伝播します。そのため、地域内の感染犬が減少すれば、感染リスクそのものも低下します。

神奈川県における感染率に関する公表データは限られていますが、東京都で実施された保護犬の調査では、感染率は1999~2001年が46.0%、2009~2011年が23.0%であったと報告されています(Oi, 2014)。この数値は「予防を行わない場合のリスク」を示す参考データとして、注意喚起の目的で引用されることがあります。しかし、対象が生活環境の異なる保護犬であるため、一般家庭で飼育されている犬にそのまま当てはめることは適切ではなく、解釈には注意が必要です。

一方、当院において2004~2025年の22年間にフィラリア検査を実施した12,642頭の犬のうち、陽性は31頭(0.25%)でした。検査対象の多くは室内飼育で、定期的に予防を実施している犬であるため、地域全体の感染率を正確に反映しているとは言えません。しかし、少なくともこの地域の伴侶動物において、フィラリア感染リスクは現在かなり低い水準にあると考えられます。

※ Oi M et al. Prevalence of Dirofilaria immitis among shelter dogs in Tokyo, Japan, after a decade: comparison of 1999-2001 and 2009-2011. Parasite. 49: 10 (2014) PMID: 24581552

フィラリア感染リスクと気温の関係

フィラリアは、「蚊がいるかどうか」だけでなく、気温条件によって蚊の体内で寄生虫が発育できるかによって感染リスクが決まります。そのため、蚊を見かける時期と実際の感染リスクのある時期は必ずしも一致しません。当院では、過去の気温データから算出するHDU※を用いて、フィラリア感染が成立する期間を推定し、予防薬の投与期間を決定しています。年によって多少の変動はありますが、神奈川県の県央地域では、おおよそ5月~11月が感染リスクを生じる期間と考えられています(図:神奈川県・県央地域におけるフィラリア感染成立期間の推定)。

※ HDU(Heartworm Development Unit)は、フィラリアを媒介する蚊の体内でミクロフィラリア(フィラリアの赤ちゃん)が感染幼虫に発育するために必要な積算温度を示す指標で、フィラリアが感染可能となる期間を気温から客観的に決定します。

図:神奈川県・県央地域におけるフィラリア感染成立期間の推定

図:神奈川県・県央地域におけるフィラリア感染成立期間の推定

フィラリア予防薬の投薬期間について

フィラリア予防薬は、蚊に刺されて犬の体内に侵入したフィラリア幼虫を駆除することで、心臓や肺動脈への成虫寄生を防ぐ薬です。そのため、蚊に刺される前から投薬しても予防効果が高まるわけではありません(図:フィラリア予防薬は幼虫を駆虫する薬)。犬の体内に侵入したフィラリア幼虫は、数か月かけて発育しながら移行しますが、予防薬は感染後およそ1か月以内の幼虫を確実に駆除できることが確認されています。このため、毎月1回の投薬により、それまでに感染した幼虫をまとめて駆除することが可能です。

当院では、気温データから算出した感染成立期間(HDU)をもとに投薬期間を設定しています。神奈川県の県央地域では、感染リスクがおおむね5月頃から生じるため、1か月後の6月に投薬を開始し、感染成立が続く11月頃までを考慮して、最終投薬は1か月後の12月までとしています(図:神奈川県・県央地域におけるフィラリア感染成立期間の推定)。蚊を見かけなくなった時点で直ちに投薬をやめてしまうと、体内に侵入した幼虫が駆除されずに生き残る可能性があります。その結果、翌春から夏にかけて成長し、心臓や肺動脈に成虫が寄生してしまう恐れがあります。

図:フィラリア予防薬は幼虫を駆虫する薬

図:フィラリア予防薬は幼虫を駆虫する薬

Q&A

Q & A:フィラリア予防薬の通年投与は必要ですか?

Q & A:猫にフィラリア予防薬は必要ですか?