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犬の腎臓腫瘍(腎細胞がん)

キーワード犬、腫瘍、腎臓腫瘍、腎細胞がん、偶発的に発見

「あすなろ動物病院」では、多くの飼い主様に病気のことを理解していただくために、来院されたワンちゃん・ネコちゃんの病気をホームページで解説しています。
この記事と似たような病気でお困りの方は、お気軽に当院までお問い合わせください。

このページでは、「犬の腎臓腫瘍(腎細胞がん)」の症例を紹介しています。「尿中に血液が混じる、お腹を触れると嫌がる・大きな腫瘤がある」という症状で、疑われる病気の1つです。

かかりやすい動物

  • 犬ではまれ、猫では極めてまれ
  • がんの種類で異なる(腎細胞がんは高齢、腎芽腫は若齢)

患者さまの紹介

犬、ウエルシュ・コーギー・ペンブローク、13歳、避妊雌、体重12.2kg

来院理由:
元気なく食欲があまりない。

来院時の様子と診察所見

身体診察

重度歯肉炎および角結膜炎を認めました。

血液検査

急性炎症の指標が軽度上昇していましたが、腎臓機能には問題は認めませんでした。

腹部超音波検査

左腎臓の頭側に内容物が液状成分の袋(嚢胞)を認め、その内部には腫瘤を疑う所見を認めました。

CT検査

左腎の頭側に隆起した嚢胞構造(最大5.7cm)を認めました(図:黄矢印が腫瘤を含む嚢胞)。

検査結果から、「左腎の腎臓腫瘍」と診断しました。血液検査の結果およびCT造影検査により、正常と思われる対側にある右腎臓の腎臓機能は問題がないと判断したため、体調の悪さの原因の1つと考えられる腫瘍のある左腎臓の摘出を計画しました。

手術と経過

術式:左腎臓尿管全摘出術

肉眼的に、右腎臓が正常であることを確認したうえで、左腎臓および左尿管を一括して摘出しました。手術後の腎臓機能や排尿に問題は認めず、順調に回復し、手術前よりも体調が良くなりました。病理組織検査の結果は「腎細胞がん」でした。手術後3年間、経過を追いましたが、再発や転移は認めませんでした。

まとめ

犬の腎臓腫瘍はめずらしい病気です。当院でこれまで手術経験した5例では、一般的に多い症状と考えられている血尿は1例でしか見られず、なんとなく元気がない、あるいは身体検査の際に大きくなった腎臓を体に触れることで偶発的に発見されたケースがほとんどです。一般的には、転移しやすく、完治が難しい腫瘍と考えられています。しかし、当院で手術経験したいずれのワンちゃんも、その後、幸いにして再発や転移を認めなかったことから、症状の乏しい無症状で発見されれば完治する可能性が高まるのかもしれません。

ご紹介したワンちゃんと同じような症状でお悩みの場合は、あすなろ動物病院にご相談ください。

当院の業績

  1. 小島健太郎、伊東輝夫、小島早織、江成暁子、内海恵利 犬の原発性腎臓腫瘍9例の臨床的特徴と治療成績第25回中部小動物臨床研究発表会 (2016)
  2. 小島健太郎、伊東輝夫、小島早織、江成暁子、牧石恵利 犬の原発性腎臓腫瘍9例の臨床的特徴と治療成績平成27年度獣医学術中部地区学会 (2015)

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